しなやかな美獣たち
第5章 ♥:最後のキスは死神と【ファンタジー・NL】
「帰ったぞ」
男はそう言うと、ベッドの上に本を投げ出す。人間界から持ち帰った"お土産"だ。彼は、彼が留守の間、あたしが暇を持て余さない様にと、こうして色んな本を持って帰ってきた。
「お帰りなさい。有難う」
あたしはそう言うと、男に抱き付き口付ける。次に男が出て行くまでの間の、逢瀬の時間の始まりである。ここに来るまで。この男に出逢うまで、身体を重ねる事は苦痛でしかなかったあたしだったけれど。今ではすっかりこの時間が、あたしの中でかなり重要な時間になっていた。だから、男が出掛けてしまうと寂しくて。一人で泣いている事もある。
ずっと一緒にいたい。
あたしはいつの間にかそう思うようになっていた。この男にとっては、あたしは玩具でしかないのだけれど。それが分かっていても、あたしはこの死神男を愛してしまっていた。
「ああっ……。好きっ!! もっと……頂戴……」
そう言ってあたしは、男を強請る。彼はあたしの言葉を聞くと、「仕方が無いな」といいながらも、あたしの望みを叶えてくれる。そう、何でも。唯、一つの事を除いて。