しなやかな美獣たち
第5章 ♥:最後のキスは死神と【ファンタジー・NL】
男の腕の中でまどろみながら、あたしはポツリと零す。「ずっと一緒にいたい。ずっと身体を繋げて、貴方を感じていたい」と。男には使命があるから、それは叶わない事だと分かってはいるのだけれど、言わずにはいられない。それだけ、この男に対する気持ちが募ってしまっていたから。
「悪いが、それは出来ない」
あたしの零した言葉に、男は決まってそう返す。分かっている事だけれど。分かってはいるのだ。彼が仕事をサボれば、地上に人が溢れてしまうのだから。
「たった一日だけでも、駄目なの?」
あたしがそう尋ねると、男は「一つの願いが叶ったら、お前はまた次の願いを口にするだろう? 人間は欲が深いからな」と言って笑う。確かにそうかも知れない。一度赦されれば、また赦して貰えるのではないかと期待してしまうから。
「でも、お前の気持ちは嬉しいよ」
そう言って男は、あたしの蟀谷に口付けを落とした。蟀谷へのキスじゃ足りなくて。あたしは男の首に縋りつくと、自分から男へ口付ける。舌で戯れながら、互いの情欲に火を点ける様に。口付けを深くしていく。
何百回、そうして時を過ごしたのだろうか。
いつの間にか、あたしは自分が人間である事を忘れてしまっていた。