しなやかな美獣たち
第1章 ♠:Vivid Colors 【学園・NL】
「あれって先輩でしょう?」
「違うよ。アタシじゃないよ?」
しれっとそう言う先輩。
「僕は別に誰かに言うつもりはありません。ただ、ユカさんに逢いたいだけなんです」
僕は真顔でそう言ってみる。
「ふぅ~ん?逢ってどうするの?」
「えっ!?それは…その…。あ!ライブでユカさんの声を聴いて感動したって伝えたくて…」
「へぇ~?そうなんだぁ~?」
そう言う先輩の顔は少し嬉しそうで。
やっぱり先輩があのユカさんなんじゃないかと僕は思った。
雰囲気はかなり違うけど。
ステージの上のユカさんは、結構きついメイクをしていたし、髪型も真っ黒で腰まであるストレートヘア。
それから、その…。
衣装も結構エッチだった。
全身がエナメル素材の衣装で、胸元が大きく開いていた、ちょっとSMの女王様みたいなイメージだった。
しかし、今、目の前に先輩は髪の色はダークブラウンだし、長さも肩より少し長いくらいだ。
それに制服姿で、年相応に見える。
でも、メイクをしてなくても綺麗だし、やっぱり普通の人とは違うオーラを纏っている気がした。
結局、あの時、先輩が保健室に居る理由は分からなかったけど、僕達はそれから、校内で顔を合わせる機会が頻繁にあった。
僕は先輩と話している内に、ステージの上のユカさんよりも、手の届くところで笑っている先輩の事が好きになっていった。