テキストサイズ

甘酸っぱい果実のその果てに

第5章 対峙

「お待たせー」

「遅えよ」

「ごめんごめん」

 そんな声が下から聞こえてきた。

「もう帰って」

「でも……俺は優衣のこと……」

「聞きたくない! もう、いいよ。聞きたくないよ」

「ごめん」

 優祐さんは、そう呟くと、階段を降りた。部屋に入ると堪えていた涙が滝のように溢れ出る。これで良かったんだ。もう、これ以上、誰にも迷惑はかけられない。

 そうだ。美羽ちゃんが言っていたように……やっぱり忘れるなんて、思えないよ。本当は、私だって優祐さんのこと好きなんだよ。本気だった。どうして……どうして、私は優祐さんよりもだいぶ後に生まれてきてしまったのだろう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ