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宇宙

第1章 もう一人の私

マツカベは用紙を絢に見せ「名前が書かれていないので採点不要です。以後気をつけるように。」と冷たい瞳で言い用紙を絢に返した。
ヒドイ!何もみんなの前で言う事ないじゃない!この冷血人間!いや、人間じゃない!冷血鬼!鬼!鬼!!鬼!!!心の中で罵倒したがマツカベの前では、弱気な小さな声で「はい」と返事をし用紙を持った手をだらんと力なく下に降ろし、とぼとぼと席へ戻った。
これを皮切りに絢は負のスパイラルに迷い込んでしまったのだ。
体育のドッヂボールでは、ボールが顔面に命中し鼻血が出て保健室に運ばれたし、給食では大嫌いなレーズンがぎっしりと入ったレーズンパンが出てきて、担任のコッペパンのようにパンパンな板野先生が、レーズンについての栄養がどおとか話していて、最後に「今日は残さず食べようの日ですよ、全部食べ終わるまでお昼休みは無しですからね。」と言い、幸せそうにレーズンパンにかぶりついた。
好き嫌いは良くないけど、レーズンパンみたいにパンパンな板野先生は、健康の為に控えた方が良いんじゃないかと、絢はお節介な事を思っていた。
絢はお昼休みを全部使ってゆっくり食べる事にした。
瑞穂もこっそり何粒か食べるのを手伝ってくれた。
何年も後から聞いた話だが、瑞穂もレーズンが苦手だったらしい。

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