
宇宙
第1章 もう一人の私
「ちょっと待ってよ!急にそんな事言われても困るよ!」
「いいから早くしなさい!」
真希はリビングの傍らに置いてあるキャリーケースを運びながら興奮した息づかいで言った。
➖➖一体何が起こったの?もしかして夜逃げ?多額の借金があったとか?
絢はいろんな不吉な事を思い巡らせながらも荷物を一つずつ車へと運んだ。
2人は無言のままリビングと車を往復し、張り詰めた空気の中、足音と荷物を運ぶ音だけが響いていた。
最後の“食材”と書いてある紙を貼り付けた段ボール箱を運び終えた絢は、疑問の眼差しを真希に向けながらも次の指示を仰いだ。
真希は車に乗るように促し、家にまだ残っているものはそのままにして鍵をかけ、車へと乗り込んだ。
ハンドルを握る両手はどこか強張り、神経の凝結した顔で話すタイミングを見計らっていた。
絢は真希の口が動き全ての事を話してくれるのを待ち、車窓から流れ行く見慣れた風景を見つめていた。
登下校全力で自転車を漕いだ心臓破りの坂は車だとあっという間に急傾斜を登る。ーーこの坂やっと立ち漕ぎしなくても難なく行けるようになったのにな。。黄金色の光が厚めの雲の隙間から差込み、思い出の詰まったこの街は、絢にかける言葉も見つけられず寂しく照らされている。
「いいから早くしなさい!」
真希はリビングの傍らに置いてあるキャリーケースを運びながら興奮した息づかいで言った。
➖➖一体何が起こったの?もしかして夜逃げ?多額の借金があったとか?
絢はいろんな不吉な事を思い巡らせながらも荷物を一つずつ車へと運んだ。
2人は無言のままリビングと車を往復し、張り詰めた空気の中、足音と荷物を運ぶ音だけが響いていた。
最後の“食材”と書いてある紙を貼り付けた段ボール箱を運び終えた絢は、疑問の眼差しを真希に向けながらも次の指示を仰いだ。
真希は車に乗るように促し、家にまだ残っているものはそのままにして鍵をかけ、車へと乗り込んだ。
ハンドルを握る両手はどこか強張り、神経の凝結した顔で話すタイミングを見計らっていた。
絢は真希の口が動き全ての事を話してくれるのを待ち、車窓から流れ行く見慣れた風景を見つめていた。
登下校全力で自転車を漕いだ心臓破りの坂は車だとあっという間に急傾斜を登る。ーーこの坂やっと立ち漕ぎしなくても難なく行けるようになったのにな。。黄金色の光が厚めの雲の隙間から差込み、思い出の詰まったこの街は、絢にかける言葉も見つけられず寂しく照らされている。
