旅は続くよ
第18章 村尾さん
「これを見せた事は櫻井さんに黙っててくださいね?
あなたには秘密にしててくれと言われたんです。
申し訳ない事に私の一存で、あなたに市報の仕事をやっていただく事は出来ない。
広報の上の連中に聞いてみたが、あなたに限らず外部の人間を雇う事は出来ないそうです」
お役所ですからね、と村尾さんは悪戯っ子みたいに舌を出した
「ですが、それを全く予想できない訳じゃない彼が頭を下げるからには、
何か理由があるんだろうと思いました。
だから、私は彼が付箋をつけてくれた所を全部読んでみました」
翔ちゃんが俺のために頭を下げた…?
もう1度紙袋に目を落とすと
数え切れない程の付箋の山
これを1つ1つ読んで
わざわざ付箋貼って
俺のために頭を…?
この場所で、村尾さんを前にして
深々と頭を下げる翔ちゃんの姿が目の前に見えるようで
…なんだか苦しいような、切ないような
なんて言うか…胸が熱くなってきた
「どんな文章でも、書き手の個性は隠せないものです。
これを読んで、あなたの話を聞いて、それが何か私にはわかった。
だからこんな話をしたんです」
村尾さんが優しく微笑む
「あなたはライターとしての適性を十分持ってると思いますよ。
これでも長くこの世界にいるのでね、それ位は判断できると自負しています。
市報は無理だが他の出版社を紹介する事も出来ます。
あなたなら紹介してもいい。
でもね、私はまずあなたに自分で目を向けて貰いたいなぁ」
「自分で、ですか…?」
「そう。今でも単発の仕事は貰えているんでしょう?
どうしてだと思います?」
「…どうして、って…」
「出版業界もバカじゃない。
やる気も才能もないライターに仕事なんか回さないはずです。
今の出版社で、何か言われた事はないですか?」
そう言われて、ふと羽鳥編集長の顔が頭に浮かんだ
仕事を始めた頃から可愛がってくれてる人で
『お前はいつまで充電してるんだ』と小言を言ってくる
あなたには秘密にしててくれと言われたんです。
申し訳ない事に私の一存で、あなたに市報の仕事をやっていただく事は出来ない。
広報の上の連中に聞いてみたが、あなたに限らず外部の人間を雇う事は出来ないそうです」
お役所ですからね、と村尾さんは悪戯っ子みたいに舌を出した
「ですが、それを全く予想できない訳じゃない彼が頭を下げるからには、
何か理由があるんだろうと思いました。
だから、私は彼が付箋をつけてくれた所を全部読んでみました」
翔ちゃんが俺のために頭を下げた…?
もう1度紙袋に目を落とすと
数え切れない程の付箋の山
これを1つ1つ読んで
わざわざ付箋貼って
俺のために頭を…?
この場所で、村尾さんを前にして
深々と頭を下げる翔ちゃんの姿が目の前に見えるようで
…なんだか苦しいような、切ないような
なんて言うか…胸が熱くなってきた
「どんな文章でも、書き手の個性は隠せないものです。
これを読んで、あなたの話を聞いて、それが何か私にはわかった。
だからこんな話をしたんです」
村尾さんが優しく微笑む
「あなたはライターとしての適性を十分持ってると思いますよ。
これでも長くこの世界にいるのでね、それ位は判断できると自負しています。
市報は無理だが他の出版社を紹介する事も出来ます。
あなたなら紹介してもいい。
でもね、私はまずあなたに自分で目を向けて貰いたいなぁ」
「自分で、ですか…?」
「そう。今でも単発の仕事は貰えているんでしょう?
どうしてだと思います?」
「…どうして、って…」
「出版業界もバカじゃない。
やる気も才能もないライターに仕事なんか回さないはずです。
今の出版社で、何か言われた事はないですか?」
そう言われて、ふと羽鳥編集長の顔が頭に浮かんだ
仕事を始めた頃から可愛がってくれてる人で
『お前はいつまで充電してるんだ』と小言を言ってくる