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旅は続くよ

第22章 分かんないよ

N「頭で考えんなよ。向いてないんだからさ。ココで考えんの」

ニノが俺の胸をツンと指で突いてた

突かれた先にあるのは、…心?


そっと

右手で心臓の上を抑えて目を瞑った


浮かぶのは、潤の笑顔

『まー兄!』

俺を呼んで笑う小さい潤

大きくなった潤

そして…

『愛してるんだ』

泣きそうだった潤の顔


分かんない

ちっとも分かんないよ

苦しそうだった

切なそうだった

あんな顔させたくなかった

でも

俺…、何も分かんないんだよ…


心に聞いても分かんない

目を瞑ったまま首を横に振ると

ニノの小さな溜め息が聞こえた


N「そうだな…。じゃあ聞くけどさ。
もしも今、俺と潤くんが海で溺れてたとして
アンタはどっちを助ける?」

A「…何それ…」

N「いいから答えなさいよ」

A「…両方に決まってんじゃん」

N「アホか。こんな質問、どっちかに決まってんでしょ?
いい?アンタの持ってる浮き輪は1つ。
俺も潤くんも沈みそうです。
さあ、どっちに浮き輪を投げる?」


想像してみた

強い風が吹いていて、俺は必死に海に向かって目を凝らす

ニノと潤が荒波に揉まれているのが見えて

2人とも、波間から必死に手を伸ばしている


A「…ニノ」

N「ん?」

A「ニノだよ。浮き輪はニノに投げる」


答えに迷いは無かった

浮き輪が1つしか無いのなら

俺はすぐにニノに投げる


N「いいの?潤くん沈んじゃうよ」

A「そんな事…させない」


ニノに浮き輪を投げたら、俺はすぐに海に飛び込むよ

潤を1人で海に沈ませたりしない

そんな事、絶対ダメだ


N「あのさ~、そういうのナシよ。
必ず1人しか助けらんないの」

A「いいよ、それでも」


ニノは絶対助ける

それは変わんない

でも、そのせいで潤が沈むのなら

俺も一緒に沈むよ

潤を1人にしない

例え一緒に死ぬ事になっても構わない

沈んでいく潤まで必死に泳いで、必ず抱きしめる


そう言うと、ニノは可笑しそうに笑った

N「アンタ、それでホントに分かってないの?」

A「…え?」

N「今の、俺には究極の愛の言葉に聞こえるけど?」

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