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旅は続くよ

第23章 あなたに1番に

N「充電期間は終わったのか?って聞かれてさ」

S「うん」

N「実は前から『いつまで充電してるんだ』って言われてて…。
俺、ずっとウザいな~って思ってたんだけど
ホントは有難い事なんだなって、やっと素直に思えて…」

S「…うん」

N「そしたらさ、『終わりました」って、スンナリ答えられたんだよね」

S「凄いじゃん」

N「ふふっ。凄くないよ、こんなの。
そしたら『ちょうど春から新しい企画スタートさせるから』って、
いきなり任される事になったのよ」

S「ははっ、やっぱ凄いじゃん」

N「いやまあ、それは凄い事なんけどさ。
参るよ。『面白いアイディア沢山出せ』って、変なプレッシャーまでかけられちゃったんだから」


クスクス笑うニノは眩しくて

それが何だか遠くに感じて

S「そっかぁ…」

それしか言えなかった


N「みんな翔ちゃんのおかげ。
ありがとうございました」

S「…そんな事ないよ」

さっきまであんなに嬉しかったのに

あんなに自分の事のように喜べたのに

…何だか寂しい気さえするのは何故だろう


S「…俺は結局何も出来なかった。
ニノの実力じゃね?」

N「え…?」

S「お前が自分で掴み取ったんじゃん。
ごめんな?あんなデカイ口叩いといて、俺はお前の役に立てなかった」


そう

結局、俺は欲張りなんだ

ニノを明るい場所に連れてくのは自分でありたかった

ニノを喜ばすのは自分でありたかった

きっと、だから…

こんな時に、こんな寂しい気持ちになるんだ

お前の為と偉そうな事言っといて

結局は自分の為だったのかもしれないんだ


N「何言ってんの?」

ニノがつぶらな瞳をまん丸にした

N「何も出来なかったなんて言わないでよ。
翔ちゃんが『働け』って言ってくれたんじゃない」

S「…それぐらい、誰でも」

N「違う!翔ちゃんだけだったじゃない!
後ろばっか見てる俺の首を前に向けてくれたの、翔ちゃんじゃないの」

S「…それは村尾さんが」

N「その村尾さんに会わせてくれたの、翔ちゃんじゃない!
俺の愚痴聞いてくれて、怒ってくれて、
優しくしてくれたの、翔ちゃんじゃないかっ!」


ニノが怒ったようにビールの缶をテーブルにドンと置いた

俺も何となくそれに合わせて、残り少ない缶をテーブルに置いた


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