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旅は続くよ

第26章 坂道にて

Sside



たまたまだったんだ

偶然にも程があるよ

いつもの日常を送っていれば、こんな偶然は起こらなかったのに



やっと桜のつぼみが膨らみ始めたな、と思ったら

今日は何を間違えたか、日中の最高気温が春らしさを越えた数値を示して

会社から帰ってきた俺を智くんは

O「お帰り、翔ちゃん。外暑かったろ」

着ているシャツの裾をパタパタさせながら出迎えてくれた

S「ただいま~。うん、あっちぃね…」

O「よくスーツ着てられんな~」

S「さすがに仕事中は上着脱いだよ」

O「どっちにしろ俺にゃ真似できねぇな。アイスでも食うか?」

S「お、いいねぇ」


夕飯前のアイスなんて、潤がいたら絶対怒られるから

何となく背徳の楽しみみたいで2人してイソイソと冷凍庫を覗いたら

肝心のアイスが1つしか無かった


S「どうする?半分こする?」

O「これを?」

S「…キムチ味?誰だよ、こんな微妙なモン買ってきたの」

O「俺は普通のバニラ、1個食いたい」

S「俺だってそうだよ。でもこれしかないんだからさぁ」

O「買ってきてよ」

S「ええっ?俺今うち帰ってきたばっか…」

O「兄の命令」

S「アホか。こんな時ばっかり兄貴ぶりやがって」

O「んじゃ、ジャンケンすっか?」

S「受けて立ちましょう」


結局ジャンケンに負けたのは俺

肝心な時勝負に弱いのはいつもの事だけど

今思えば、何が何でもこの時ジャンケンに勝っておくべきだった


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