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旅は続くよ

第28章 信じて

M「ただいま、って…」

A「今帰ってきたんだよ。だから、ただいま」

M「やり直すって、そっから?」


思わず笑ってしまった

まー兄は時々突拍子もない事するけど

まさか、こんな時に…

それでも何処か憎めない

今も大マジメな顔で、俺の目の前に座った


A「あのね。俺が今から言う事、黙って聞いてほしいんだ」

知ってる

まー兄のこの顔

小さい頃から俺にいろいろ諭してくれる時の顔

A「反論とか、後で聞くから。
取り敢えず、黙ってよく聞いて」

M「…うん」

俺は頷いて、まー兄の言葉を待った

小さい頃からそうして来たから

まー兄が1つ大きく呼吸して、言葉を選んでるのも

ただ黙って見てた


A「俺は、潤が大好きだよ」

また言ってる…

でも反論は出来ない

言いつけ通り、黙って聞くしかない


A「潤がもう俺の事ホントに好きじゃなくても…
俺は、好き。ちゃんと好きだよ」

まー兄が真っ直ぐ俺を見て言葉を続ける

A「…よく考えたんだ。ワケ分かんなくなる位、いっぱい考えたよ。
考えすぎてドツボにハマッちゃって…
でもその間、1度も潤をフろうだなんて思わなかったんだ」

ゆっくり、心の中を確かめるように話してる

A「俺はね、ずっとニノを好きだと思ってたから…
いや、それもちゃんと好きだったと思ってるよ?今でも。
でも…ニノに言われたんだ。
俺の1番は潤だって。
それでまた考えて…、うん、そうなんだなぁって。
弟だからとかじゃなくて、潤だから1番大事なんだなぁって分かったんだ」


真っ直ぐ俺を見ていた目が少し細くなって

僅かに揺れて、潤んできた

A「悩んだんだ。今でもちょっと悩んでる。
兄貴なのに…、俺が潤を好きになっちゃったら、潤の普通の幸せを奪っちゃうかも知れないのに…
俺、…やっぱり好きなんだ。
そう気づいたら止められなくなってんだ。
もう兄弟でも、そうじゃなくてもいい。
潤と一緒に生きて行けたら…
それだけで、俺……」


ホントに?

まー兄が嘘をつくとは思ってないけど

でも…


M「…まだ…黙ってなきゃダメ?」

A「まだダメ…」

零れた涙が頬を伝っているくせに

頑固なんだから…


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