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旅は続くよ

第36章 今度は俺の番

そんな事をまた繰り返してる或る日、

コンコン…と、部屋のドアが小さくノックされた

O「…ちょっといいか?」

開けた扉の隙間から見えたのはさと兄で

N「いいけど…、どしたの?珍しい」

小さく部屋の中を指さすから、黙って招き入れた


そういや、さと兄が俺の部屋に来るなんて初めてだ

それなのに、まるでいつもそうしてるみたいに俺のベッドに腰掛けたから

俺も黙ってその前の床にクッションを抱いて座った

部屋のアチコチにある山積みになった衣類や本を見つけられて

O「なんだ、掃除中?」

N「…あ~、まぁね。やり出したらキリなくて…」

『出てけ』って言われたなんて言えなくて、何となく誤魔化した


O「あ~、あるよね。そういうの」

N「で?どしたの?わざわざさと兄が此処来るなんて」

O「あ~、…うん。…翔ちゃんの事なんだけどさ」

N「翔ちゃん?」


ドキッとした

さと兄にも『出てけ』って言われるのかな


O「ニノさ…、恩返ししたいって言ってたよね」

N「…うん…?」

O「ひと肌脱いでくんない?」

N「はあ?」


そこで初めて聞いたんだ

今、翔ちゃんの身に何が起こってるのかを


翔ちゃん宛に掛かってきた電話を偶然さと兄が取って

不在を告げても押し黙る相手に嫌な予感がして

根掘り葉掘り聞きだしてしまったらしい

お姉さんから翔ちゃんに電話した事

お父さんの病気の事

翔ちゃんが無言で電話を切ってしまった事

それきり翔ちゃんから何の連絡もない事


O「どうしたらいいもんかな」

N「どうしたら…って…。別にいいんじゃない?そのままで。
翔ちゃんが無視したって事は会いたくないって事でしょ?」

O「でもなぁ…。暗いじゃん、翔ちゃん」

N「…まあね……」

O「ニノだって『元気ない』って言ってたろ?」

N「うん…」


俺のくだらない話をなんでも優しく聞いてくれてた人が

最近は何を言っても上っ面の笑顔しか見せなくなっていた

じゃあ、あれは俺が嫌になったとか、煩わしくなったとかじゃなくて

その電話があったからって事…?


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