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旅は続くよ

第36章 今度は俺の番

O「俺さ…一緒に育ってきて、そこにはずっと触れちゃわないようにしてきたんだ」

N「そこ、って…翔ちゃんと本当の親子や兄弟じゃない事?」

O「うん。まあ、気持ちは本当の親子だったし兄弟なんだけどさ…
例えばな?翔ちゃんが高校の時、私生児だってわかって少し荒れちゃった事があったんだよ」

N「あー…、それ聞いた事ある」

O「…そっか。翔ちゃん、結構ニノには何でも言ってんだなぁ
そんでね、その時も俺は一切触れなかったし、慰めもしなかった
お前は俺の弟なんだから、それ以外の何者でもないんだからって…、それで通したんだ」

N「それはそれでいいんじゃない?
言ってたよ。大野のお父さんがいろいろしてくれたって」

O「うん。あの時は俺も母ちゃんも何も出来なかったから。
今でもさ…、そこに自分から触れられないんだよね、俺。
別に憐れんでんじゃないし、遠慮してんでもねぇんだ
上手く言えねぇけど…、兄貴でいるため、っつーか…」


迷ってるように鼻の頭を掻くさと兄に

兄貴なら言ってあげてもいいんじゃない?

そう言い掛けて止めた


そんな事はきっと、さと兄だってわかってる

きっと、触れたくても、自分から触れる事をしないと決めてるんだ

翔ちゃんから言ってきたなら、やっと触れる事ができるんだろう


今だって、ホントは誰にも打ち明けずに暗くなってる翔ちゃんに手を差し伸べてやりたいはずなんだ

それなのに、ただ翔ちゃんに『弟である場所』を作って置くために

さと兄は沈黙を守ってる

それが正しい事なのかどうか、俺には分かんない

でも、兄弟でいるための、これがさと兄のやり方なんだ

2人はそうやって兄弟でいたんだね…

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