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旅は続くよ

第37章 兄弟

A「ボーリング?あ~、言ってた言ってた」

M「久々だよね、2人でやんの」

A「潤が中学ん時だっけ。なんか2人で行ったよね」

M「おじさんからお小遣い貰ってさ。それ賭けたんだよ、確か」

A「くふふっ、そうそう!じゃあ今回も何か賭ける?」

M「いいよ。何賭ける?」

A「え~、じゃあね、負けたら勝った方の言う事1つ聞くってのは?」

M「乗った」


話が纏まった頃ちょうどアイスコーヒーも飲み干して

じゃあ行こうかと席を立とうとした時、声を掛けられた

「あのぉ、お2人ですか~?」

俺らのテーブル脇に立つ女性2人組

またか

まー兄といると、昔からこういうパターン多いんだよ


A「ん?何ですか?」

女子大生っぽい2人に丁寧に答えるのは、まー兄だけ

俺はあからさまに仏頂面をして見せる

「私たちぃ~、これから飲みに行くんですけどぉ~」

行けよ、勝手に

そして語尾を伸ばすな

うんざりする俺をチラッと見て、女子大生はまー兄だけをターゲットに決めたようだ

人の良いまー兄は、それに気づかず答えてやる


「そっか。俺らこれからボーリングなんだ」

「ええ~?いいなぁ~ボーリング、私たちも行きたぁい。ねっ」

「うん。ご一緒していいですかぁ~?」

ダメに決まってんだろ!

飲みに行くんじゃねーのかよ!

心の声を顔に出す俺と対照的に、まー兄はニッコリと笑った

「ごめんね。邪魔されたくないんだ」

「…え」

「潤、いこっ」

「うん」


呆然と立ち尽くす2人を横目にコーヒーショップを後にする

ざまーみろ

そう小気味よく思うのと同時に、溜め息が出た


M「…まー兄、慣れてるよね」

A「え、何が?」

何が、って逆ナンにだよ

そんでもって、自分がモテる事にちっとも気づいてないんだから…

言っても仕方ない言葉を飲み込んで、クスッと笑って見せた


M「邪魔されたくないんだ?」

A「だってそうじゃん。せっかくのデートなんだからさ~」

…まったく

この人はどれくらい俺を浮かれさせれば気が済むんだろう

長年の切ない片思いが嘘みたいだ

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