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旅は続くよ

第37章 兄弟

M「手を繋ぎたくなっちゃうな」

A「…バカ。ここじゃダメ」

俺は別に人混みの中でも構わない

この人は俺の恋人なんだぜ!って叫んでもいいんだ

でも許してあげる

M「可愛い」

A「…もう!潤うるさい」

わかってるよ

どうせ声が嗄れるまで叫んだって満足しないくらい浮かれてるんだ



久しぶりのボーリングで腕が痛くなるほど白熱した試合は

2ゲームやって、両方まー兄の勝ち

A「ぃよっしゃー!」

M「…くそっ」

A「うははっ!ムキになっちゃって~」


ムキにもなるよ

だって賭けてたんだぜ?

邪な気持ちが肩に変な力を入れてたのは途中でわかっていたのに、修正なんて効かなかった

どうしても叶えたい願いがあったから…


M「で、何すればいい?」

ボーリング場を出て、パスタを食べながら聞いてみた

A「何って?」

M「もう…。賭けただろ?負けたんだから素直に言う事聞くよ」

A「ああ~っ、そうだったそうだった!」

食べかけのパスタをチュルンと口に収めて

A「うーん…、何にしよっかな~」

クリクリの目玉を上に向けながら考える姿は可愛いけどさ

考えてなかったのかよ

俺なんてメチャメチャまー兄に叶えて欲しい事があったのに…


結局、食事の間も、新しいビルの中をブラブラしてる間も“敗者への指令”は決まらず

帰るわけでもなく街の夜風に当たってる時に

隣を歩くまー兄が、突然ツンと俺の服の裾を引っ張った

M「ん?どうしたの?」

A「…あのね。さっきの賭けだけど……」

雑踏に紛れて聞こえづらい小さな声に、心なしか赤くなってる顔に耳を寄せると

A「…キス、…したいな、って……」

耳を疑うほど嬉しい提案が聞こえた

M「え、今?」

A「バカッ、今なワケねーだろっ!」

M「別に俺は今すぐでも構わないけど?」

A「ウチで!ウチ帰ってからだっつーのっ」

照れ笑いを隠さずに慌てて顔を離すから俺も笑顔になる


ずーっと悩んで出た答えがキスだなんて

まー兄は俺を喜ばす天才

『今すぐ』と言われたら躊躇せずにキスするのに

本当だよ?


フワフワ浮かれて舞い上がった気持ちは

「おい」

不意に後ろから肩を叩かれてピタリと翼を止めた

誰だよ、いい時に!

半ば怒りながら後ろを振り向くと、驚いた顔をした翔兄がいた

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