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旅は続くよ

第37章 兄弟

M「翔兄?」

A「え、翔ちゃん!?」

S「何してんの、お前ら。こんな所で」

こんな所でって…コッチが聞きたいよ

スーツ姿でいつもの鞄を持って、市役所からも家からも離れたこんな場所で会うなんて

こんな離れた街でデートしてれば、知り合いに会わずに済むと思ってたのに


M「翔兄こそ、なんでこんな所に」

S「え、俺?…まあ、ちょっと用事があって…」

M「ふーん…」

S「あ、そうだ。お前らメシ食った?これから飲みに行かね?」

M「あー、ごめん翔兄。俺らもう済ませちゃった」

M「…そっか。でもちょっと位いいだろ?」

A「ごめんね、翔ちゃん。俺ら今デート中なの」

S「へ?…ああ、はははっ。まったお前ら兄弟は」

A「ラブラブ中なんだから邪魔しないでね」

翔兄の言葉を遮るようにニッコリ笑うと

A「ホントごめんね。潤、いこっ」

M「あ、…うん」

A「じゃーね、翔ちゃん」

S「あ、ああ…」

M「翔兄、ごめん」

歩き出すまー兄について行って、チラッと振り返ると

翔兄が豆鉄砲喰らったハトみたいにポカンとしていた


M「良かったの?アレ」

A「いーんだよ。…ったく、翔ちゃん時々空気読めないんだから~」

M「…まさか翔兄、俺らのこと知らないんじゃ…」

A「まっさか~。さと兄やニノから当然聞いてるでしょ」

M「…だよね?…うん、だよな」

A「で、どうする?これから。翔ちゃんにああ言った手前まだ帰れないし」


気を取り直したまー兄が弾むような声を出した途端

「あの~、お2人ですかぁ?」

さっきと違う見知らぬ女性2人組にまた話しかけられた

「良ければ一緒に…」

「良くない!ごめんね!」

流石のまー兄もキレ気味に答えて、

ビックリして目を点にした2人組を置き去りに、そのまま歩き続けた


A「…ったくさ~、ドイツもコイツも何だっつーの!」

口を尖らせてプンプンしてるまー兄には悪いけど

俺は嬉しさがフツフツと湧いてくるよ

だって『ラブラブ中なんだから邪魔しないで』なんてさ…

少し前の俺に聞かせてやりたいよ

A「人がせっかく楽しみにしてたデートを邪魔しちゃってさ~」

M「へぇ、そんな楽しみにしてくれてたんだ」

A「あっ、や!やっぱ今のナシ!……もぉ・・・」

恥ずかしそうに俯いて歩くスピードを早めた体を、腕を掴んで止めた

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