
旅は続くよ
第38章 今さら
N「…市長…?」
S「元、な。とっくに引退してる」
N「よくわかったね、こんなの」
S「大きな親切で勝手に教えてきたんだよ。お姉さんってヤツがさ」
検索ネットには顔写真は掲載されてなくって
市長を務めた場所は、聞き覚えがある程度の地方都市の名前だった
N「え…、ここって、日本海側だっけ?」
S「そう。多分あの人の地元なんだろうな」
ネットに書かれている出身地は、確かに同じものだった
N「翔ちゃんのお母さんも同郷?」
S「いや、母さんはチャキチャキの江戸っ子。この人の経歴見てみな」
ネットを読み進むと、出身地の次に簡単な経歴が書いてある
S「ほら、ここ。この頃ウチの母さんと付き合ってたんだと思う」
翔ちゃんが示した指先には民間企業にいた頃の役職名が書いあった
N「同じ会社?」
S「違うけど、調べてみたら母さんの職場に近かった
キッカケなんて知りたくもねーよ」
言葉は乱暴だけど投げ捨てるような響きは無い
S「問題はここ」
さっき指した箇所のすぐ下
翔ちゃんのお父さんが、地元の帰って市会議員に当選した年
市長就任はその4年後になっている
N「あ・・・」
意味がわかった
市会議員になった西暦
それは、翔ちゃんの生まれた年だった
S「認知しねーわけだよな、スキャンダルだもん。むしろよく中絶されなかったよ、俺」
N「やめてよ、そんな言い方」
芽生えたばかりの命が、そんな理由で絶たれるなんて恐ろしすぎる
翔ちゃんがこの世に生を受けなかったら…なんて、今の俺には冗談でも考えられなかった
N「全ては野心のためって事ですか…。サイテー」
S「愛人にガキができたからって、もう後には引けなかったんだろ
市会議員たって、市長に打って出る布石だったんだろうし。
そもそも選挙に打って出るなんて、大勢の人間を巻き込むもんだから」
N「なんでそんな物わかりの良さそうな事言うのよ。なんか…他人事みたい」
S「まあ…他人事みたいなんだよ。突然姉がどうの父がどうの言われてもさ」
N「そんな…、だって最近元気ないじゃない。悩んでたんじゃないの?」
S「…悩む?俺が?」
翔ちゃんは戸惑ったような顔をして笑った
S「元、な。とっくに引退してる」
N「よくわかったね、こんなの」
S「大きな親切で勝手に教えてきたんだよ。お姉さんってヤツがさ」
検索ネットには顔写真は掲載されてなくって
市長を務めた場所は、聞き覚えがある程度の地方都市の名前だった
N「え…、ここって、日本海側だっけ?」
S「そう。多分あの人の地元なんだろうな」
ネットに書かれている出身地は、確かに同じものだった
N「翔ちゃんのお母さんも同郷?」
S「いや、母さんはチャキチャキの江戸っ子。この人の経歴見てみな」
ネットを読み進むと、出身地の次に簡単な経歴が書いてある
S「ほら、ここ。この頃ウチの母さんと付き合ってたんだと思う」
翔ちゃんが示した指先には民間企業にいた頃の役職名が書いあった
N「同じ会社?」
S「違うけど、調べてみたら母さんの職場に近かった
キッカケなんて知りたくもねーよ」
言葉は乱暴だけど投げ捨てるような響きは無い
S「問題はここ」
さっき指した箇所のすぐ下
翔ちゃんのお父さんが、地元の帰って市会議員に当選した年
市長就任はその4年後になっている
N「あ・・・」
意味がわかった
市会議員になった西暦
それは、翔ちゃんの生まれた年だった
S「認知しねーわけだよな、スキャンダルだもん。むしろよく中絶されなかったよ、俺」
N「やめてよ、そんな言い方」
芽生えたばかりの命が、そんな理由で絶たれるなんて恐ろしすぎる
翔ちゃんがこの世に生を受けなかったら…なんて、今の俺には冗談でも考えられなかった
N「全ては野心のためって事ですか…。サイテー」
S「愛人にガキができたからって、もう後には引けなかったんだろ
市会議員たって、市長に打って出る布石だったんだろうし。
そもそも選挙に打って出るなんて、大勢の人間を巻き込むもんだから」
N「なんでそんな物わかりの良さそうな事言うのよ。なんか…他人事みたい」
S「まあ…他人事みたいなんだよ。突然姉がどうの父がどうの言われてもさ」
N「そんな…、だって最近元気ないじゃない。悩んでたんじゃないの?」
S「…悩む?俺が?」
翔ちゃんは戸惑ったような顔をして笑った
