
旅は続くよ
第38章 今さら
押し黙ってしまった俺の隣で、翔ちゃんが大きく深く息を吐いた
S「ダメだな、俺。…なるべく普段通りにしてたつもりだったんだけど…」
溜め息交じりに微笑って、ボソボソと話しだしてくれた
S「ずっと…、グルグルとずっと同じ事ばっか考えてんだ…」
N「うん…」
S「突然父親だなんて言われても、俺にとっての父親はずっと大野の父さん以外いないんだよ
大野の父さんに育てて貰って、智くんが兄貴で…。それが俺の家庭って信じてる
でもさ、そう『信じてる』って思ってる時点でもうダメなんじゃないか?嘘なんじゃないか?
そんな気がしちゃってさ…。俺の言ってる事、わかる?」
N「うん。わかるよ…」
S「元市長なんて言ったってさ、俺と母さんを捨てた人間だ
きっとロクなヤツじゃない。ただ俺の種ってだけだよ
会ったところで、どうにもならねーと思うんだ」
俯いたまま、太腿の上に投げ出した自分の手を見ながら、淡々と話す
S「もうすぐこの世からいなくなるんだって…、急に言われたってなぁ
だから何?どうすりゃいいの?って…わかんねーよ
だったら考えるだけ無駄じゃねーかってさ…」
N「…うん。でも考えちゃってんだね?」
S「そう、なのかな…」
そう呟くと、翔ちゃんは僅かに自分の手を睨んで、その手をギュッと握った
S「…だとしたら俺…、サイテーじゃね?」
N「…なんで?」
S「俺は大野の父さんを裏切ってる事になる。智くんの事も…
実の息子だって言ってくれてたのに、本気で俺を弟だって言ってくれてるのに、俺は…っ」
N「何言ってんの、そんな…」
S「だって!俺は会ったこともない奴の事考えてる。遺伝子の繋がりしかない奴なのに!」
声を荒げて俺に向いた翔ちゃんの瞳が揺れてる
硬く拳を握ったまま、苦しそうに…
S「父さんも智くんも、捨てられた俺をすげー愛してくれたんだ!
ずっと俺、大事に育ててもらったよ。勿体無いくらい長い時間かけて慈しんでくれたんだ。
それを、俺は……っ
これって裏切りだろ?なあ、そうだろ!?」
N「そんな事ない…っ!」
爪が食い込むほど硬く結んだ手を、俺は上から強く握った
そんな事はない
決してないんだ
そう翔ちゃんに伝えるために
S「ダメだな、俺。…なるべく普段通りにしてたつもりだったんだけど…」
溜め息交じりに微笑って、ボソボソと話しだしてくれた
S「ずっと…、グルグルとずっと同じ事ばっか考えてんだ…」
N「うん…」
S「突然父親だなんて言われても、俺にとっての父親はずっと大野の父さん以外いないんだよ
大野の父さんに育てて貰って、智くんが兄貴で…。それが俺の家庭って信じてる
でもさ、そう『信じてる』って思ってる時点でもうダメなんじゃないか?嘘なんじゃないか?
そんな気がしちゃってさ…。俺の言ってる事、わかる?」
N「うん。わかるよ…」
S「元市長なんて言ったってさ、俺と母さんを捨てた人間だ
きっとロクなヤツじゃない。ただ俺の種ってだけだよ
会ったところで、どうにもならねーと思うんだ」
俯いたまま、太腿の上に投げ出した自分の手を見ながら、淡々と話す
S「もうすぐこの世からいなくなるんだって…、急に言われたってなぁ
だから何?どうすりゃいいの?って…わかんねーよ
だったら考えるだけ無駄じゃねーかってさ…」
N「…うん。でも考えちゃってんだね?」
S「そう、なのかな…」
そう呟くと、翔ちゃんは僅かに自分の手を睨んで、その手をギュッと握った
S「…だとしたら俺…、サイテーじゃね?」
N「…なんで?」
S「俺は大野の父さんを裏切ってる事になる。智くんの事も…
実の息子だって言ってくれてたのに、本気で俺を弟だって言ってくれてるのに、俺は…っ」
N「何言ってんの、そんな…」
S「だって!俺は会ったこともない奴の事考えてる。遺伝子の繋がりしかない奴なのに!」
声を荒げて俺に向いた翔ちゃんの瞳が揺れてる
硬く拳を握ったまま、苦しそうに…
S「父さんも智くんも、捨てられた俺をすげー愛してくれたんだ!
ずっと俺、大事に育ててもらったよ。勿体無いくらい長い時間かけて慈しんでくれたんだ。
それを、俺は……っ
これって裏切りだろ?なあ、そうだろ!?」
N「そんな事ない…っ!」
爪が食い込むほど硬く結んだ手を、俺は上から強く握った
そんな事はない
決してないんだ
そう翔ちゃんに伝えるために
