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旅は続くよ

第6章 一緒にゲーム

あれはニノが大学生の頃

俺は働きながら調理師学校行ってて忙しくて

あの時、ニノと会うのは久しぶりだった


一目見て驚いた

顔色が悪く、目の下の隈が酷くて

もともと華奢な体が痩せ細ってて

理由を聞いても、ニノはヘラヘラ笑ってはぐらかすばっかり

散々問い詰めて、やっと聞いた理由


『…眠るのが怖いんだ。夢を見るから』



毎晩見るんだって言ってた

大体いつも同じ

ニノのお母さんが出てくる夢


一緒に死んでくれと頼まれて

夢の中でニノは必死で止めたり、

一緒に死んでやると言ったり、

いろいろ頑張るんだけど…

結局、お母さんは1人で死んでしまう…

そんな夢


実際にニノのお母さんが亡くなったのは、中学の頃だ

ニノは葬式の後、学校を休んだ

その間に、『ニノのお母さんは自殺したんだ』って噂が流れて

俺は慌ててニノの家に行ったけど

誰もいなくて…


1ヶ月位して、やっと学校に出てきたニノは

ビックリする程、飄々としてた


お母さんの死因も

ニノが小さい頃からお父さんと一緒に住んでない事も

お父さんが余所に家庭を持ってる事も

セットになった噂はニノを傷つけていた筈なのに

そんな噂を小馬鹿にするようにニノは笑ってて

俺はただ、一緒に笑ってやることしかできなくて…


ガキだったから、ニノは強いヤツなんだと思ってた

でも、それは違ってたと思い知ったんだ


眠れないと言うニノにも

俺はただ、家に連れ帰って一緒に寝てやる事しか出来なかった


お母さんが亡くなってから何年も経つのに

飄々としてたのに

まだ夢を見て眠れなくなるなんて…

それだけ傷はまだ生々しくて

カサブタどころか、まだ血が滲んでんのかも知れなくて

残されたニノは、それでも生きてかなきゃいけないんだ

こんなに苦しんでるから

こんなに忘れられないから

ニノは生きていくのに、笑うしかなかったんだ

なのに俺は何も出来ないでいた


せめて

俺がいるよって

俺は傍にいるからって

ギュッと抱きしめてやりたかった

それしか出来なかった



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