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旅は続くよ

第9章 一緒に寝ようよ 雅紀編

N「アンタさ…、もしかしてあの女に引越し先知らせちゃった?」

A「あ…、うん…」

N「なんで?俺、止めとけって言ったよね?」

A「でも…、一応潤を産んだ人だし…」

ホントは随分迷ったんだ

本音を言えば2度と関わりたくなかったから

でも、逃げるみたいで嫌だとも思った

もし万が一見つかった時罵られるかも知れない

非常識なあの人はきっと自分の事を棚に上げて酷い事を言うだろう

そう思っただけで悔しくて

キチンとしておこうと思ったんだ


N「お人よし。あの女が乗り込んで来たらどうすんの」

A「…そこまでしないよ、きっと」

N「どうだか。常識が通用する相手じゃないと思うけどね」

A「潤だってもう大人だもん。今さら子育てしたいワケじゃないだろうしさ」

N「バーカ。大人だからいいんだろ?
老後の面倒見させようとかさ、潤くん優秀だし」

A「そんな……」

だとしたら、最低最悪に勝手な話だ

潤を絶対にそんな目に合わせられない


A「…来たら追い返す。絶対」

N「アンタに出来んの?そんな事」

A「出来る。潤はウチの子だもん」

N「その潤くんに直接言いに来るって事もあるかもよ?」


それは困る

あの人が潤を引き取りたいって言い出したのは、潤が高校生の頃

あの時はウチに乗り込んで来た

潤は怒って断ったけど

その後、泣いてたんだ

あの人から産まれた事を『情けない』って…

そんな事言わなきゃいけない潤が可哀想だった

だから俺は潤をあの人に会わせたくない

絶対に


黙り込んでしまった俺に

ニノがわざと明るい声を出してくれた

N「ま、大丈夫だって。心配ないよ」

A「…なんで?」

N「どうせ俺がほとんど1日中留守番してんだし?ことごとく断ってやるよ」

A「あ…、そっか…」

N「だから任せときな」

A「…うん」

N「そういやさ、聞いたんだけど知ってる?さと兄の笑える話!」

A「え、なになに?」

N「あのさ~…」

ニノがどこからか仕入れてきたさと兄の話に切り替えてくれて

俺は正直ホッとした

あの人の事はもう考えたくなかった


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