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蒼い月の下で

第2章 歌姫

それは酷く寂しい光景だった。あんなに夢見てたはずだったのにーー。



ミラの心に昏い影を落とす。



自分の暮らしている場所がどんなに華やかで、恵まれているのかを思い知る。鮮やかな珊瑚礁の森、月色魚の群れに、人魚姫たちの竪琴と美しい歌。豊富な資源があり、毎日が楽園。



ーーわたしは甘かった。現実は甘くないことを、どうして忘れていたのだろう。




そのとき、微かに花の香りがした。



花の香りがするのはーーおかしい。この世界には果てしなく続く、水の世界しかないのだから。


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