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雨が夕日に変わるとき

第1章 雨が夕日に変わるとき


 すぐ近くのいつものホテルに着く。外観はレンガ作りでお洒落な感じだ。もちろん、部屋の中も薄いブラウンと白で統一されていて綺麗だ。

 ホテルに入ると背の高い将ちゃんのネクタイをグッと引っ張り唇を奪う。

「んっ!? 綾芽ちゃん!」

 私は将ちゃんの言葉を遮り、スーツを脱がす。

「綾芽ちゃんっ! どうしたの?」

「早く安心したいの! 将ちゃんに抱かれたいの! 嘘だって、偽者だって分かってる。でもその時だけ、愛を感じた気になれるでしょ? 将ちゃんは奥さんいて子供いて幸せかもしれない。だけど私はっ!」

 一気に言うとその場に座り込んでしまう。まただ。私はまた言ってはいけないことを言ってしまった。将ちゃんは私の我侭に付き合ってくれているだけなのに。どうして私はこんな風にすることしか出来ないのだろうか。

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