
雨が夕日に変わるとき
第1章 雨が夕日に変わるとき
「綾ちゃん、終わったよ」
「あ、ごめん、ごめん」
私はマイクを持つと歌を歌う。最近デビューしたアーティストの悲しい恋愛ソングだ。
「~♪触れたくて触れられなくて
愛しくてこんなにも恋しい
どうしてあなたを好きになってしまったのだろう
分からない
けれどこの気持ちを伝えてしまったらすべてが終わりそうな気がして……」
「綾ちゃん、どうしたの?」
「え?」
「え? じゃないよ。なんで泣いてるの?」
眞子ちゃんの言葉にカバンから手鏡を取り出す。自分の顔を見ると頬が濡れていた。慌てて頬を制服の袖で拭く。
