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ミニスカート

第11章 キセキの街に最後の恋の旅

傷ついた心、病気の体、偽りの出張・・なんだか大人の恋愛ドラマの要素がいっぱいで旅情を感じる。

たぬ吉の背徳を責めるように激しい雨が降り出した。今日は雨になると天気予報でも言っていたな・・

もしも電車が止まってしまって帰れなくなったら・・その時は何とかするとして、とりあえず行きだけはちゃんと着いてほしい。

もしも旅先や出張したことになってる所で大災害とかあったら・・いっそその災害で死んでしまえば、誰に何を言われても関係ないし、大好きな街で死ねるのならそれもいいか・・

自分は死んでもバツ2さんと娘には無事でいてほしいな・・

そんなことを考えていると湯煙が見えてきた。雨の中に湯煙が見えるのもまた風情がある。

湯煙が見えたということはもうすぐ目的地、終着駅だ。なんとか着きそうだし、あんなに激しかった雨も小降りになってきた。

電車は無事に終着駅に着いた。
雨はすっかり上がっていた。
この街はやっぱり自分を歓迎してくれるのかとたぬ吉は少し嬉しくなった。

何もかもが懐かしい。大好きなこの街をしばらく楽しみたいところだが、ヘタにウロウロしてると会社の人や知人に見つかる危険がある。

たぬ吉は帽子を目深に被ったまま足早にバツ2さんの所へ急いだ。

「あっ、たぬちゃん、お帰り~」
とバツ2さんは嬉しそうにたぬ吉を歓迎してくれた。

クソガーキが一緒の時は「お久しぶり、いらっしゃい」だったのに「お帰り」と言ってもらって嬉しい。

「ただいま」

「たぬちゃん来たよ~」
とバツ2さんは娘に声をかける。ずっとお店でたぬ吉を待っていてくれたようだ。

「あっ、たぬちゃん、お帰り~」

「ただいま~」

娘も嬉しそうにたぬ吉を出迎えてくれたので、たぬ吉は隣に座った。

たぬ吉の他には常連客が3組しかいない。今日は天気が悪かったせいか客足が少ないようだ。

たぬ吉がビールを頼むとバイトの女のコ(おばさん)がクスクスと笑いながらビールを届けてくれた。

「今週はたぬちゃんが来るっていうからずっとご機嫌だったんだから」と笑いながらビールを注いでくれる。

「もう、やめてよ~」とバツ2さんは顔を赤らめて自分の樽ハイを用意する。

バイトさんにも酒を進めるが、今日は運転する可能性が高いからと烏龍茶にする。

「お帰り、たぬちゃんってことで乾杯~」

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