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ミニスカート

第11章 キセキの街に最後の恋の旅

飲み友さんたちも帰ってお店には3人だけになった。

「今日はもう来そうもないからお店でご飯にしましょう。まかないで悪いけど、たぬちゃんもどうぞ」

バツ2さんはテキパキとまかないの仕度をしてくれる。

「はい、いただきますをしてください」

バツ2さんに言われて娘は保育園で習ったいただきますをする。たぬ吉とバツ2さんも一緒に。

バツ2さんと娘と並んでいただきますをして夕食をする。たぬ吉はここが本当の家庭で、今が単身赴任をしているような気分になる。

そういえば、クソガーキが小さい頃から家庭内別居状態だったので、クソガーキとこんなふうにいただきますをしたことはないなぁとクソガーキには悪いことをしたと思う。

「たぬちゃん、さっきあたしが前のカレシのことを話した時に妬いてたでしょ」

「別に~、そういう人がいたって不思議じゃないと思ってただけだよ」とそっけなく言うたぬ吉だが・・

「きゃはは、絶対妬いてたくせに」

「うん、焼き餅の顔してた。嘘ついちゃいけないって先生が言ってたよ~」

と娘も嬉しそうに笑ってたぬ吉を口撃する。
もう、女のコはおませさんなんだから・・

「ごめんなさい。もう嘘はつきません」
たぬ吉は娘に頭を下げながら笑顔をかわす。

「安心して、その人とはもう何でもないから。終わって1年くらいしたらたぬちゃんが帰ってきたの」

「そっか。ボクがこのお店に来たのは娘のおかげだよ。このお店の看板娘に引かれてね」

娘はこのお店の看板娘みたいなもので常連客には可愛がってもらっている。

このお店は夏の夕方とかは戸を開けて営業していることもある。たぬ吉がこのお店に来た時には男の店員もいて、たぬ吉はバツ2さんとその男が夫婦だと思った。そして愛くるしい娘もいる。
家族でやっていてカンジが良さそうなお店だなぁと思って娘に誘われるようにたぬ吉はこのお店に入ったのだった。懐かしい。

「きゃはは、あの人若作りしてるけど還暦だったのよ。ちょうどたぬちゃんが来たのは還暦で引退する頃だったんだから」

「え~っ、還暦~っ。いつの間にかいなくなったと思ってたけど・・」

自分たちと同じぐらいだと思っていた男が還暦だったとは・・まだまだ若くいなきゃと思うたぬ吉。

「娘は男の人は恐がって近づかないのに不思議とたぬちゃんにはなついたんだっけ」
とバツ2さんは懐かしそうに言う。

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