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ミニスカート

第11章 キセキの街に最後の恋の旅

そういえば娘がなつくのは女性客や女性が一緒にいるグループだけだ。パパとしては安心だと思うたぬ吉。

「きゃはは、きゃはは」

バツ2さんがいきなり大笑いをするので、たぬ吉は思わずどうしたのと聞く。

「だって、たぬちゃんたら、あたしのこと覚えてる?って言ったらすっかり忘れてて目をパチパチして・・あの顔は忘れられないわ。きゃはは」

確かにすっかり忘れていた。それに、あの時は初めてお店に来て若作りの還暦男とバツ2さんが夫婦だと思っていたので、ダンナの前でいきなりあたしのこと覚えてるなんて言われたら慌てるよとたぬ吉。

実は昔、たぬ吉とバツ2さんは会っていた。

12年ぐらい前にたぬ吉はこの街に時々仕事で出張をしていた。その時はまだ下っぱだった。

たぬ吉のチームがよく行くスナックがあってそこにバツ2さんがいたのだ。この街にはキャバクラや風俗はないが、スナックなら何軒かある。

ただし、たぬ吉のことがスゴく気に入っていた女のコがいて、そのコとばかり話してたからバツ2さんのことをあまり覚えていなくてもムリはない。

そのコはたぬ吉にばかりくっついてきたので、下っぱのたぬ吉としては困ったりもしたっけ。

実はそのコと付き合っていて、こっそりと日曜からこの街に泊まってデートしたりしていたのは内緒の話。

単身赴任してきた時にまだそのスナックはあって、行ってみたらママもたぬ吉のことを覚えていてそのコの話で盛り上がったな。

実は大富豪の娘で、おカネばかり与えられて愛情のない家庭がイヤで家出をしてそのスナックに転がり込んだという何ともドラマチックなお姫様だった。

結局は家に戻って大富豪の御曹子と結婚して会社をいくつも経営する超大富豪になったとはママから聞いた話。

もったいないことをした。そんな大富豪と分かってればあんなに自分にベタ惚れだったんだからとっとと離婚して結婚すればよかったとヨコシマな事をちょっと思ったのはやはり内緒の話。

「しょうがないよね、たぬちゃんあのコに夢中だったもんね・・でもあたしもたぬちゃんのこと好きだった」

「だったら言ってくれれば・・」

「あたしは人のカレシにちょっかいを出したりしないタイプなの」

「でも、時を越えてこうして一線にいられる。キセキだね」

この街には本当にキセキがあるんじゃないかと思うたぬ吉。



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