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恋愛成就の願いごと

第1章 恋愛成就の願いごと

「いいわよ。私、明日は仕事休みだから存分に案内してあげる。君、修学旅行生でしょ?」

「よく分かりましたね。それと僕、君って名前じゃないです」

「そりゃあ、ここらへんじゃ見かけない制服だし、きょろきょろして思い切り挙動不審だったもの。で、君じゃなかったらなんて名前よ? ちなみに私も巫女さんって名前じゃないからね」

「あ、そっか。僕の名前ですか? 当ててみて下さいよ」

 男の子の反撃が始まった。一枚討ち取ったりみたいに余裕顔のそれを破るのが私。腕時計を見て一言。

「そんなこと言ってる暇あるの? もう五時だけど?」

「えっ? わわ、いつの間に。すみません、僕、そろそろ行きますねっ! 失礼します!」

 男の子は慌てて石段を駆け下りる。

「こけるなよー」

「こけません!」

 男の子は途中でくるりと振り返った。

「僕の名前は、如月涼平(キサラギ リョウヘイ)ですっ!」

 大声で言うとまた走り出した。涼平が見えなくなるまで私は手を振る。そういえば私の名前、教えてないや……なんて思ったけれど、明日教えればいいや。明日も会えるしね。なんて考えると心が躍った。石段に背を向け社務所へと足を運んだ。

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