お嬢様と二人の執事
第1章 沙都子
そう…もう私、一人なんだ…。
いないと思ってた親族がいた…。
それは嬉しかったけど…そのきっかけは父母の死であることが辛かった。
亘と対面して父母の過去が分かったところで沙都子の今日の目的は粗方、果たされた。
父母が居なくなっても自分の時間は止まらない。
明日の事を考え、そろそろ帰ろうと思った。
「沙都子」
亘が沙都子に声をかける。
「はい、お祖父様」
「沙都子、その、なんだ…1つ、私の願いを聞いてくれないだろうか?」
「願い…ですか?私でお手伝い出来ることなら」
たった一人の肉親の言うことを無下にできるほど沙都子はすれてはいなかった。
にっこりと笑って亘を見る。
「沙都子じゃないと叶えられないことだよ。沙都子、この老いぼれのところに正式に孫娘として来てくれないだろうか?」
「正式に?って」
「いずれ東堂グループを継ぐものにということだよ」
「そんなの!無理です…わたしなんかにできません。」
首を振る沙都子に亘は優しく語りかける。
「言い方が悪かったな、すまない。継ぐか継がないかは後で決めればいい。でも一緒に暮らしたいというのは難しいだろうか?」
亘の目に見える消しがたい悔恨の情。
それを目にして沙都子は断ることができなかった。
少し考えた後、亘に笑顔を向ける。
「はい、お祖父様。私でよければ…。」