お嬢様と二人の執事
第1章 沙都子
寂しくて、悲しくて、辛くて…。
誰か助けてとあの日からずっと心で叫んでた。
そんな中、差し伸べられた手を…沙都子は握った。
それは沙都子の運命を大きく変えた瞬間だった。
「沙都子さん、お帰りになる前に少しお話があるんですが、よろしいですか?」
沙都子が亘と話している間、その場を離れていた成瀬が戻ってきて話しかける。
「はい、なにか?」
「少し話し辛いことで申し訳ないんですが、今回の雄介と雪芽さんの死去で沙都子さんに相続が発生します。」
一瞬つらそうな顔をした成瀬が続ける。
「沙都子さんが相続されるものは皆さんが住んでらした家を含む土地、家屋、雪芽さん名義の株を含む有価証券、雄介が運用していた不動産の全てになります。」
家のことは判っていたが有価証券に不動産は初耳で沙都子は驚きを隠せない。
「あの、株とか不動産って」
「雄介は本当に優秀だったようですね。今回、こちらで確認して分かったことですが雄介は会社員として勤務する傍ら、株など運用をしていたようです。雪芽さんのものは生前分与されたものです。」
「あの、成瀬さん…ごめんなさい、よく分からないんですが…」
徐々に専門的になりつつある話についていけなくなった沙都子がストップをかけた。