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お嬢様と二人の執事

第5章 漂


時間になって玄関に出た沙都子は息を飲む。

いつもの運転手が沙都子のための車であるマイバッハを玄関前につけていた。

沙都子は小さくため息をつくと高宮の方を向く。

「あの車では大学には行けないわ。
あの…もっと普通の車はないかしら?

もしないのなら…駅まででお願いしたいんだけど…。」

さすがにあんな目立つ車で大学に乗り付けたら…周囲から何を言われるかわかったものではない。

「それに運転手付きって…。」

半ば泣きそうな顔をしている沙都子。

立場や運転手の仕事は理解してる。
でもそれとこれは別だ。

そうでなくても大学には色々な人間がいる。
どこでだれが噂するかわからないからなるべく目立ちたくないと思っているのに…。

知らず知らずのうちにため息をつく沙都子。

そんな沙都子を見ていた白河が高宮に言う。

「高宮さん、貴方の車で送って差し上げたら?貴方の車ならこの車と違って目立たないでしょ?」

「いや、まぁ確かに私の車はごく普通のものですが…。」

高宮は躊躇を見せる。

「沙都子様、まだお時間はありますから…安心してください。わたくしが説得しますから。」

白河は柔和な笑みを見せながら沙都子に囁く。

その言葉がすごく頼もしく思えて沙都子の顔にもようやく笑顔が戻ってきた。

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