お嬢様と二人の執事
第5章 漂
車が大学の正門近くに着くと沙都子が高宮に声を掛ける。
「この辺でいいです。」
高宮は沙都子の声に素直に従いハザードを出すと車を停める。
「今日は何時頃まで授業でらっしゃいますか?帰りもお迎えにまいりますので。」
高宮の言葉に少し戸惑いながらも沙都子も素直に答える。
「今日は2時限目のみなのでお昼過ぎには終わります。でも多分久しぶりなのでお友達とランチをすることになると思うんだけど…。」
大学に近づき、気持ちが以前に戻ってきたのか口調が砕けてきた沙都子。
ちょっと前まではどこにでもいる普通の女子大生だったわけだからなにも不思議ではない。
「では、終わられましたらこちらの電話でご連絡ください。」
高宮はいわゆるガラケーを取り出すと沙都子に渡す。
「私の番号を登録しております。ご連絡頂ければお迎えに上がりますので。」
そう言うとさっと外に出て助手席のドアを開けた。
沙都子は何も言えないまま、車から出た。
キャンパスに向かって歩こうとした沙都子の後ろから沙都子の名を呼ぶ声が聞こえた。
振り向くとそこには沙都子にとって大事な友だちの一人、麻紗がいた。
「沙都、会いたかった!心配したんだよ…。大丈夫?ちゃんと食べてる?」
テンション高めの明るい声に沙都子の顔に笑みが溢れる。
麻紗が高宮の存在に気がついて会釈する。
そんな麻紗に気がついた沙都子があわてて麻紗の腕を掴み、キャンパスに向かって歩き始める。
「ちょっ、沙都、待って!置いてかないでよ。私も行くから」
麻紗も慌てて歩き出す。
その様子を高宮はくすぐったそうな顔で見つめていた。