お嬢様と二人の執事
第5章 漂
何年か前に改修されたカフェテリアはガラス張りの明るい建物で朝から晩まで学生で溢れかえっている。
なんとか窓際に空きを見つけた3人。
席を取ると絢が二人に聞く。
「麻紗、いつものやつでいい?沙都子はどうする?一緒に買ってきちゃうよ。」
綺麗な顔立ち故、きつめな印象を与えるが実は気配り上手な絢はこういう時、率先して買い物に行く。
「うーんと…アイスのカフェモカにしようかな?」
沙都子もいつものことなので遠慮せずに言う。
ここで遠慮すると逆にめんどくさいことになることは中学からの付き合いで十分すぎるほどわかっている。
「あっ、絢、ついでになんかお菓子欲しいなぁ」
麻紗がここぞとばかりにリクエストする。
麻紗と絢は更に以前からの付き合いだから遠慮の欠片もない。
見目麗しい美女二人がコントさながらのやり取りをするのだが周りからは単に仲のいい二人にしか見えていないから面白い。
「わかったわ、甘いのとしょっぱいのどっちがいい?」
なんだかんだ言って優しい絢が麻紗にではなく沙都子に聞く。
「え?私は…。」
「ふふふ、遠慮しないの。これから色々聞かせてもらうつもりだしね?」
絢の目に真剣な光が見える。
沙都子は覚悟を決めた。
全部は話せないけど…話せる範囲は話さないと…。
「じゃぁ…おせんべいがいいかな?」
「カフェモカにおせんべい?沙都の味覚って相変わらずちょっと変わってるよね?」
麻紗がのんびりと言う。
「わかった。じゃ、ちょっと待っててね」
そう言って絢が歩いていった。