お嬢様と二人の執事
第5章 漂
しばらくして戻ってきた絢が二人に飲み物を渡しながら口火を切った。
「沙都子…大変だったね?今どうしてるの?」
「二人とも心配かけてごめんね。今はお祖父さまのところにいるの。」
「『お祖父さま』?沙都、親戚いないっていってなかったっけ?」
麻紗が不思議そうに聞く。
それはそうだろう、沙都子自身だってびっくりしたぐらいなんだから。
「私も知らなかったんだけど…お母さんの方の親戚が葬儀の時に来て…初めて知ったの。」
さすがに執事が来たとは言えなかった。
「そっかぁ…。学校に来たってことは、もう落ち着いたの?」
絢の声がやさしい。
「うん、大丈夫だよ。もう。」
絢も麻紗も沙都子の性格をよく知っている。
すぐ我慢することも、なかなか言葉にしないこともよくわかってる。
きっとまだ内になにかを秘めているのも…。
でも、無理矢理聞いても話さないのもわかっているから、性急に聞くことはしなかった。
「あっそう言えばさっきの車のイケメンは?誰?」
麻紗がいつもの素直さでストレートに聞く。
その一言で高宮の存在を思い出した沙都子。
「なに?イケメンって?」
絢が麻紗の一言に喰い付いた。
「沙都のことを送ってきた人がね、すごい格好良かったの。なんかね、端正な顔立ちなのに…笑った顔が子犬みたいで可愛かったの」
あの短時間でそんなところまで見てたんだって沙都子は変なところに感心していた。