お嬢様と二人の執事
第5章 漂
二人は沙都子のことを妹のように思っているが沙都子も同様の感情を二人に抱いている。
沙都子の意識の中では二人のお姉さんのつもりでいる。
だから二人を周囲の醜い嫉妬から守るのも傷ついた二人を慰めるのも当然だと思っている。
そんな沙都子だから麻紗と絢のお願いを無碍にすることは出来なかった。
「高宮…さんは彼氏とかじゃないの。えーっとね、お祖父さまの会社を手伝ってる遠縁の人なの。」
心の中で嘘をつくことを詫びる沙都子。
でも…神山は屋敷のみんなは家族のような存在だと言っていたからあながち嘘ではないよね?と自ら言葉を正当化してみたりもする。
「お祖父さまが心配して…高宮さんに送ってもらったの。」
「じゃ、しばらくそんな感じ?」
麻紗が聞いてくる。
「うん、多分。帰りも迎えに来るって…」
「じゃ、友だちとしてご挨拶しないとね?」
絢がにっこりと笑う。
「そうだよね?これからきっと毎日のように会うことになるだろうし。」
麻紗も綺麗な顔に笑みを浮かべ、絢と視線を交わす。
この瞬間、二人と高宮を会わせることが決定事項となった。
「よーし、じゃ、ランチにしよう?」
麻紗がいつものように太陽のような笑顔で言う。
「今の時間ならスペシャルも確保出来るね?」
絢も明るい声で言う。
「今日のスペシャルなんだろう?沙都はどうする?」
「二人と一緒でいいよ。」
元々、食にこだわりのない沙都子はいつも通りの返事をした。
「じゃ、沙都子待っててね?」
そう言って絢と麻紗は席を立った。