お嬢様と二人の執事
第5章 漂
「お待たせ、沙都子。」
トレイをもった絢と麻紗がやってくる。
「スペシャル、ゲット出来たよ。」
スタイル抜群なのに食べるのが大好きな麻紗はすっかりご機嫌だった。
財布を出した沙都子に二人は笑う。
「今日は奢りね?」
「あとでイケメンに会えるしね?」
「でも…。」
「いいのいいの、久しぶりに沙都に会えたのが嬉しかったから。」
「だからここは奢られときなさい。」
完全に押し切られた沙都子。
でも二人の気遣いが嬉しかった。
「うん…ありがとう。ふたりとも大好きだよ。」
そこからは3人で久しぶりのランチをしながら、他愛もない話に興じる。
それは極々普通の女子大生の日常の様子だった。
久々の空気に癒された沙都子は高宮との約束を守るために迎えにくるよう連絡した。
「あと10分ぐらいで着くって」
沙都子は二人に告げる。
「じゃぁ行こう?」
絢のかけ声で3人はカフェテリアを出て正門に向かった。
正門に着いた3人の前に赤い車が滑るように走ってきて停まった。
運転席から高宮が出てくる。
「お待たせしました。沙都子さ…ん」
様という一言が高宮から出る直前に目線で合図した沙都子。
察した高宮が不自然でない程度に無理矢理修正した。
絢がにこやかに高宮に近づく。
「はじめまして、沙都子の友だちの絢と言います。こっちが麻紗さん。きっとこれから何度もお逢いすると思うのでご挨拶だけさせて頂ければと思って。」
そう言う絢に高宮は人好きのする笑顔を浮かべ、優雅に挨拶した。