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お嬢様と二人の執事

第5章 漂


絢と話す高宮と高宮を見る沙都子を見ていた麻紗が沙都子にだけ聞こえるように言う。

「高宮さん…だっけ、あの人、沙都のことが好きだね…。」

「え?」

思わず麻紗のことを見上げた沙都子。
麻紗そんな沙都子をじっと見る。

「沙都も…嫌いじゃないでしょ?高宮さんのこと。なんか揺れてる気がする。」

「麻紗…ちゃん?」

沙都子は動揺が隠せなかった。

一瞬浮かぶ神山の顔。
昨日、自覚した神山への想い。

なのに…私…高宮さんのことが好きなの?
少なくとも私のことをよく知ってる麻紗がそう言ってる。

絢も…そう思ってるの?

沙都子がそっと目線を絢に向ける。

その瞬間、高宮と視線が交わる。
高宮の視線が…男性のもので沙都子の心が跳ねた。

そんなはずはないと必死に否定する沙都子。

「そろそろ行きましょうか?」

そんな沙都子に高宮が何でもない顔で声を掛ける。

沙都子は麻紗と絢に挨拶をして、高宮の車に乗り込んだ。

車が走り出してしばらくして高宮が沙都子に話しかけるわけでもなく呟くように言う。

「沙都子様のお友達はとても素敵な方々ですね。沙都子様のことを大切になさっているのがよく伝わって参りました。沙都子様ご自身の人徳とご両親様の愛情の賜物でしょうね。」

そう言う高宮の顔はとても穏やかなものだった。

あの日…沙都子が見た悲しそうな何かを秘めた高宮の顔が思い出された。

そして…聞きたいと思った。

なにが高宮にあんな顔をさせるのかを。



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