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お嬢様と二人の執事

第5章 漂


沙都子は初めてラブホテルに入った。

外観が普通だったので、シティホテルだとばかり思っていた。

しかし建物に入ってみて、テレビで見たことのあるパネル式の受付があるのを見て、ここがどういう場所なのかわかった。

足が竦んで動けない沙都子の腕を、高宮が引いて連れていったバスルームで服を脱ぐように言う。

確かに濡れたままの洋服が気持ち悪い。

「一人で大丈夫なので…外にいてください。」

「お一人で脱ぐのは大変でしょう。主人の着替えを手伝うのも執事の役目でございます。」

そういってにやりと笑う。

「高宮!」

思わず声を荒げた沙都子に高宮が表情を変えた。

「すみません。冗談がすぎましたね?でもこのままでは本当に風邪を引いてしまうので…。」

濡れてまとわりつく洋服に手間取る沙都子から手際よく洋服を剥ぎ取るとそのまま湯船に導く。

「ゆっくり入って体を温めてください。私は少し外しますので。」

そう言うと高宮は沙都子に一礼してバスルームを出た。

「一也さん…。」

自分のせいで濡れたのに嫌な顔一つせず、的確に動く高宮。

皮肉な口調ではあるものの、その根底にある優しさにふれ、沙都子の心は揺れ動く。

浴槽の中で頭を振り、揺れる感情を振り切ろうとする沙都子。

でも…それは難しかった。

高宮にだまされた形で抱かれたのに憎みきれずどこか惹かれている。

神山と気持ちが通じた今でも…。


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