お嬢様と二人の執事
第5章 漂
バスルームを出ると高宮の姿はそこになかった。
身につけられるものがバスローブしかなかった沙都子はバスローブのままベッドに腰掛ける。
久しぶりの登校とその後あったことで疲れきった沙都子はそのままベッドに倒れ込む。
ホテルの白い天井につけられた木製のファンが廻るのを眺めながら思考の海に堕ちていく。
一也さんのこと…私は本当はどう思っているんだろう?
レクチャーと嘘をついてまで私を抱いた一也さん。
昨夜抱きしめられた時に伝わってきた熱は本物だと信じられた。
でも沙都子には、その後の神山と高宮のやり取りが引っかかる。
高宮の本当の望みは…なんなのだろう。
考えていると部屋のドアが開いた。
その音にびくりと反応した沙都子。
ドアの方に目を向けるとそこにはいくつかの紙袋を提げた高宮がいた。
「お待たせいたしました、沙都子様。手近な場所で揃えたのでお気に召すか不安ではありますが…、どうぞ。」
紙袋を差し出す高宮を沙都子は見つめる。
「ありがとう。あの…一也さんは?濡れたでしょ?お風呂、お湯を変えてあるから…どうぞ?」
紙袋を受け取りながら沙都子は言った。
「いや…しかし…。」
「そのままじゃ、また風邪がぶり返してしまうから…ね?」
沙都子の可愛らしい仕草に押し切られた高宮は不承不承という態でバスルームに入っていった。
その様子を満足げに見た沙都子は手にした紙袋をソファーに置き、一息ついた。