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お嬢様と二人の執事

第5章 漂

天井の木製のファンを見つめて、荷物の横に座り込む。

一体、自分の気持ちがわからない。

神山と確かに通じあった喜びがある。

だが、たった一晩自分の身体を抱いた、高宮のことがなぜここまで気にかかるのか。

答えは、沙都子の中にはなかった。

それどころか、どんどん混乱の淵に追い込まれていた。

高宮と過ごすほど、なにか手放しがたい感情が生まれてくるのを感じた。

あの目…

高宮が不意に見せる、あの淋しげな目。

神山には微塵もない、孤独をそこに感じていた。

それは両親を亡くしたばかりの沙都子には、共感できるような孤独で。

放っておけない。

そう、沙都子は感じていた。

10歳も年上の男性に、そんなことを思うのは失礼かもしれない。

年若い沙都子の中に、母性が目覚めている。

だが、今の沙都子にはそれが何なのかわかっていない。



突然、バスルームから大きな音が聞こえてくる。

びくりと身体を震わせると、沙都子は思考の淵から帰ってくる。

そっとバスルームの扉の前に立つと、中を伺う。

「一也さん…?」

返事はない。

うっすらとガラスの向こうに、高宮の裸体が見えた。

一瞬、身体がカッと熱くなる。

しかし、沙都子は高宮の異変に気づいた。

「高宮さん!?」

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