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お嬢様と二人の執事

第6章 過去

孤児になった俺は、施設に行くことになった。

準備をして家を出ようとしたその時、部屋の呼び鈴が鳴った。

そっとドアを開けると、そこには少年が立っていた。

「…どちらさまですか?」

俺の声を聞くと、少年は微笑んだ。

「俺は神山と言います。東堂のお屋敷に勤めています」

こんな少年が?

東堂の屋敷に勤めている?

神山は東堂の主人が、母親のことをいたく残念がっていて、息子が居ると聞いて、屋敷に引き取りたいと言っていると伝えてきた。

「そんな話…受けるわけにいきません」

憐れまれるのはごめんだった。

それなら施設で割りきって生活したほうが、どれだけ楽か。

「会長はね、君を将来屋敷で雇いたいって言ってるんだ」

「俺を?」

神山は微笑むと、俺の肩に手を置いた。

「俺も中学を卒業してから、東堂で働いてるんだ」

「働いてるって…何やってるの?」

「フットマンだよ。今は…雑用係だね…。でも将来は執事にも家令にも出世できるポジションなんだ」

執事…?家令…?

聞いたこともない言葉に戸惑った。

「孤児院に行くより、ずっとやりがいのある仕事ができると思うよ?」

仕事…

中学を出たら、どうしようと考えていた。

働ける。

孤児になってしまった俺には、その言葉がとても魅力的に思えた。

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