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お嬢様と二人の執事

第6章 過去

訳がわからなかった。

いつの間にか、泣きわめいていた。



「高宮!高宮っ!」

目を開けると、神山が俺の肩を持って揺さぶっていた。

「…?」

「おい…どうしたんだ。酷くうなされてたぞ?」

「あ…」

全身を汗が濡らしていた。

真っ暗な部屋で、神山はパジャマにウールのカーディガンを羽織って、ベッドに座っていた。

「酷い汗だ…具合、悪いのか?」

そう言って、俺の額の汗をパジャマの袖で拭った。

涙が、勝手に溢れてきた。

「あ…いやだ…いや…」

「高宮?」

「やめて…やめてぇ…」

「高宮、しっかりしろ!」

「こわい…」

身体が震えた。

止めようとしても止らない。

震える手で、神山に縋った。

「たすけ…て…」

「高宮…」

突然、神山が俺の身体を抱きしめた。

「助けてやる。」

「あああああっ…」

神山の胸で、泣いた。

あの時も、涙なんて出なかった。

全て枯れてしまったと思った。

なのに…止まらなかった。

次から次へと出てくる涙は、神山のパジャマを濡らした。

神山はそんなことに構わず、俺が泣き止むまで抱きしめ続けた。

「もう…平気か?」

泣き止むと、神山が俺の顔を覗き込んだ。

こくりと頷くと、神山は微笑んだ。

「もし、話せそうなら…俺に言ってみないか?楽になるのなら…」

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