お嬢様と二人の執事
第1章 沙都子
走り出した車の中で亘が黙り込む沙都子に話しかける。
「沙都子?どうしたのかな?急な事で疲れてしまったか?」
「あの…その…驚いてしまって…。まるで映画のお話のようで…」
「沙都子…。これは現実だよ。お前はこれからこういう世界に生きることになる。最初は驚くかもしれないがそのうち当たり前になるだろう。
そのサポートは神山をはじめ、何人かのものが当たるから安心していい。」
にっこり微笑む亘の顔に母の面影が映る。
母がそばで見守ってくれてるようで少しホッとした。
と同時にやはりこの人は自分の祖父であるのだと確信した。
この先、どうなるのか正直わからない。
でも自分で踏み出すことを決めてしまったから…もう引き返せない。
膝に置いた手をぎゅっと握り、沙都子は決意したように目の前を見つめる。
しかし…この決意もしばらくして後悔に変わってしまう。
「もう着くよ、沙都子の住む場所は別棟になる。
メイドに着替えを用意させているから支度が出来たら本棟のダイニングにおいで。
夕食を一緒に取ろう」
亘の口からにわかに信じがたい単語が次々と出てくる。
別棟?本棟?メイド?
もしかしてとんでもないところに足を踏み入れてしまったのではないかと不安になり始めた沙都子。
その不安はすぐに現実になった。
大きな門に吸い込まれる車。
しばらく走るとようやく建物が見えた。