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お嬢様と二人の執事

第8章 惑い


笑う高宮の強さに敵わないと思ってしまった。

亘様は常々、俺たちに言っていた。

「身につけた知識や教養は誰にも奪えない。それは生きるための重要な武器になる。

だから自分を磨きなさい。そのための時間を惜しんではいけない。
学べる時にはたくさん学びなさい。」

故に亘様は俺たちに進学するようにと言われた。

仕事を覚え早く一人前になりたいと思っていた自分も高宮も最初は亘様の意向を受け入れがたかった。

しかし東堂に使える人間として恥ずかしくないようにという城さんたちの話もあり、俺たちはそれぞれ進学した。

敵わないとおもった高宮にせめて軽蔑されないようにと励んだ日々。

高宮が俺のことをどう思っていたのかはわからない。

それでも俺たちは微妙なバランスを保ちながら屋敷の中で少しずつその立ち位置を上げていった。

自分と高宮の関係に変化が訪れたのは高宮が留学を終え、帰国してからだったと思う。

高宮が選んだ留学先はイギリスだった。

本場で学びたいという高宮に亘様が知り合いの家にホームステイしながら学べるように手筈を整えた。

高宮が旅立ってしばらくして、入れ替わるようにイギリスから東堂の屋敷に来た人物がいた。

彼の話す美しいキングスイングリッシュを習得したくて彼とコミュニケーションを取るようにした。

彼はイギリスでの高宮の様子も教えてくれた。

それは…自分の知っている高宮の姿とはかけ離れたものだった。

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