
お嬢様と二人の執事
第8章 惑い
彼の話す高宮は自分の知っている高宮とは別人だった。
高宮は確かにあまのじゃくなところはある。
ただそれは基本的には高宮特有の照れ隠しのようなもので素直になることを恐れる故だと思う。
幼い頃にあれだけ壮絶な経験をしてきた高宮だ。
素直になって裏切られることの辛さがあいつに頑なな態度やあまのじゃくな態度を取らせてるんだと思ってる。
なのにだ…。
彼の語る高宮は才気に富み、それを隠すこともせずむしろその才能で周囲を惑わし、誑かしているというのだ。
ホームステイしている屋敷の家の子息を誑しこみ、その人物を足掛かりにいわゆる上流階級のパーティーなどに何度となく顔を出しすごい勢いで人脈を拡大させているという。
最近は現地で起業のようなことまで始めたという…。
バックには彼が得た人脈とその人物たちが持つ潤沢な資金があるという…。
正直、そんなことにわかに信じられなかった。
日本での交流で信用に足ると思った人物から語られたその話に何を信じていいかわからなくなった。
高宮は確かに野心的なところがあるとは思う。
でもそれは決して人を追い落とすようなものではないと思っていた。
人を誑かすとかたらし込むというイメージとは違う。
あいつの笑顔は本当に素直で可愛らしいものだから…。
彼は最後に言っていた。
「高宮は美しい顔をした悪魔だな…。高宮に魅入られたら最後、破滅するまであいつの手のうえで踊らされてることに気が付かずにいるよ」
そんなわけあるはずはない。
しかし、高宮はその後、亘様の指示で留学期間を短縮して帰国した。
