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お嬢様と二人の執事

第9章 雪の降る街

「沙都子様…」

今日は高宮が来た。

バスローブを持って、浴室の出口に控えている。

「ありがとう…」

バスタブから身を起こすと、高宮の腕に包まれる。

そっと抱きしめる高宮の胸に、沙都子は全てを預ける。

「行きましょう…」

全身を丁寧に拭くと、高宮は沙都子にバスローブを着せた。

手を取ると、寝室へと沙都子を導く。

そっとベッドに寝かせると、ジャケットを脱ぎ捨て、沙都子の横に身を横たえる。

沙都子の手がベストを脱がすとき、二人は身体を重ねる。

そうではない時、そのまま添い寝をして朝まで過ごす。

選択権は沙都子にあった。

沙都子は知らぬうちに、二人の男の生殺与奪権を握っていたのだ。

愛しい者を前にして、その気にならない男は居ない。

だが、沙都子の前では二人の男はそれを堪えるしかない。

沙都子のことを思う気持ちと、また互いのことをじっと見ているであろうもう一人の執事を意識してのことだ。

微妙なバランスは、誰かがその思いを溢れさせた時、崩れるであろう。

今は誰もそのバランスを崩したくはない、そう思っている。



沙都子の手が高宮のベストに掛かった。

高宮は目を閉じて、息を吐き出す。

その柔らかい肢体を、高宮の手が滑るまで、時間はかからなかった。

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