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お嬢様と二人の執事

第1章 沙都子

「お帰りなさいませ。沙都子様」

玄関を入ったフロアは、吹き抜けになっていて広い。

そこに数人並んでいる。

ふくよかな女性が進み出て、沙都子の手を取った。

「ああ…よく似ていらっしゃる…」

そう言うと、涙を浮かべた。

「母を…ご存知なのですか?」

「ええ…私は白河と申します。沙都子様のお母様にお仕えしておりました。子供の頃から…」

「まあ…」

「あの頃に戻ったようでございます。これからは精一杯、沙都子様にお仕えいたします」

「白河さん…」

「沙都子様」

神山が後ろから声を掛けた。

「なんでしょう…?」

「白河は使用人でございます。どうぞ呼び捨てで」

「そんな…」

こんな年長の者を呼び捨てになどできない。

考えた挙句、沙都子は立場を利用することにした。

「慣れるまでは呼び捨てはいたしません。これは、私の…め、命令です!」

「まあ…なんとお可愛らしいことを…」

白河は涙を拭きながら、笑う。

「…ご随意に…沙都子様」

神山は微笑みながら、頭を下げた。

神山の微笑みをみて、なぜだか沙都子はホッとした。

「では他の者もご紹介いたします」

そういうと、並んでいる者に声を掛けた。

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