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お嬢様と二人の執事

第1章 沙都子

並んでいる端から、一歩前に出て自己紹介をしていく。

「沙都子様、はじめまして。私はこの館の執事を勤めます、高宮と申します。
この館の事に関しては、なんなりとお申し付けください」

「え…?神山さんも執事ですよね…高宮さんも…?」

神山が沙都子の隣に並んだ。

「私は、このお屋敷全体を見ております。
家令が腰を痛めておりますので、現在は私が家令の代行を務めております」

「か、家令…ですか…」

「家令とは使用人を束ねる者でございます。我々執事も監督いたしております」

「そうですか…」

そうなると、神山は使用人のトップということになる。

こんなに若いのに、と沙都子は思った。

「高宮はこの館の専属でございます。これからは沙都子様のご用事は高宮が承ります」

「そうですか…」

なんとなく、神山と接点が薄くなることが心細かった。

「沙都子様、使用人の前でそのようなお顔をなさらないように」

そっと神山に囁かれた。

「え…?」

「貴女はこの館の主人なのです。毅然とした態度でいらしてください」

厳しい口調に、思わず涙がこみ上げてくる。

もともと下がり気味の眉が、一層下がってくる。

「さ、沙都子様…」

慌てて神山が、沙都子の顔を覆い隠す。

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