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お嬢様と二人の執事

第9章 雪の降る街

翌朝起きると、高宮は沙都子の傍に居ない。

あれほど熱い夜を過ごしても、いつも朝には一人だった。

淋しい身体を抱えながら、バスルームへ向かおうと身体を起こした。

「あ…」

窓の外が一面の銀世界になっていた。

「綺麗…」

ガウンを羽織っただけの格好で、窓辺に佇む。

窓の下では館のものが雪かきをして道路を開けていた。

皆、おっかなびっくりで雪かきをしているのが、沙都子には面白かった。

窓辺でくすくす笑っていると、寝室のドアをノックするものがあった。

「はい」

「神山でございます。入ってよろしゅうございますでしょうか」

「貴子と優子は…?」

「まだ、一階にて控えております」

「入って」

神山は入るなり、まっすぐに沙都子を見つめる。

「おはよう…神山」

「おはようございます。沙都子様」

神山は沙都子に歩み寄ってくると、跪いて手の甲に口吻した。

あの夜から、これは二人の間での習慣になった。

「今朝のご気分はいかがですか?」

「ええ…悪くないわ」

高宮に抱かれた次の朝は、どうしても他人行儀になる。

「沙都子様…このような格好ではお風邪を召します…」

神山が沙都子の手を離そうとした瞬間、その手が強く握られた。

「あ…」

沙都子は顔を赤らめて、手を離した。

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