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お嬢様と二人の執事

第9章 雪の降る街

「お風呂に入るわ…」

高宮に抱かれたままの身体で、神山と相対したくなかった。

「沙都子様…」

神山が沙都子の腕を掴んだかと思うと、ぐっと引き寄せ胸に抱きしめた。

「高宮は本日一日、亘様に付き添って外出です。今日は私が沙都子様のお世話をさせていただきます」

「え…?」

「今日は大学はお休みでしょう?」

「ええ…」

「なんなりと…私にお申し付けください…」

にっこりと神山が沙都子に笑いかける。

「で、でも…」

「では城をここに寄越しましょうか?」

「えっ…」

ぷっと神山は噴き出した。

「も、もうっ!城さんにここまできて頂いたら、また雪で滑って腰を痛めてしまうわ…」

沙都子がムキになって言うと、神山は爽やかに笑った。

「では、私で我慢なさいませ」




貴子と優子には、今日一日は沙都子がゆっくりと部屋で過ごすと伝え、控えているのをやめさせた。

神山は部屋に戻ると、浴室のドアを開け、中に入る。

バスタブには沙都子が浸かっており、神山を見つめている。

神山はジャケットもなにもかも脱ぎ捨て、生まれたままの姿になり、入っていく。

「悟さん…」

沙都子の後ろに回りこみ、バスタブに身を滑らす。

後ろから沙都子を抱え込むように包むと、神山はやっと安堵できた。

この手の中に沙都子が居ることが、今の彼の全てだった。

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