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お嬢様と二人の執事

第10章 旅立ち


「いや、特に用事はないよ。まぁ学長から昼食の誘いぐらいはあるかもしれないがね。」

本来ならば亘は卒業式に参列する予定はなかった。

しかし、沙都子がダメ元で出席してほしいと頼んだのだった。

東堂の家の力は経済界のみならず教育界にも効く。

亘は目立たないが十分に式を見ることが出来る場所を大学側から用意され、出席することになった。

「では…式が終わったら少し時間を貰えませんか?私の大事な友だちに会ってもらいたいんです。」

「そういうことなら喜んで…。終わったらいつでも電話をしておいで。番号はわかってるね?」

亘は笑いながら沙都子に言う。

「はい、大丈夫です。では行って参ります。」

そう言うと亘が向かう方向と逆に向かう。

紺色の袴の裾を乱さないように気をつけながら友の待つキャンバスに入った。

キャンバスの桜並木の下、いつもの笑顔の二人が待っていた。

深緑の袴に黄色の中振袖をあわせた麻紗。

濃い紫に絞りの入った柄の布の切り替えがある個性的なデザインの袴にところどころに絞りを入れたシンプルだが品のいい臙脂の着物の絢。

絢の足元は編み上げブーツでモダンなテイストを加えている。

二人とも沙都子を見つけると手を振ってくれた。

二人の元に駆け寄る沙都子。

「麻紗ちゃん、絢ちゃん…卒業、おめでとう」

「ありがとう、沙都子もね?」

絢が笑顔で言う。

「二人とも、そろそろ行こう?」

麻紗が二人に声を書ける。

3人、そろって式が行われる講堂に向かった。




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